瀬戸内国際芸術祭

野生の獲物
ドイツ童話『漁師とその妻』をモチーフに、染め・編み・大工という、日本とドイツの3つの職人技術の要素を持つ舞台装置から構成されるインスタレーション。会場となる古民家や伊吹島の歴史と相まって、ひとつの空間をつくり出す。

西冥の魚
伊吹島の調査から着想を得た作品。屏風状のパネルには巨大な魚や大量の小さな魚たちが波間の魚群となって描かれる。厚く塗られた下地に線を彫り込み、ぶちまけられた岩絵の具は鱗模様を生み出し、ダイナミックな力強い刻線によって豊穣な生命力が鮮やかに表現される

ものがみる夢
旧小学校の2つの教室内に「海の庭」「島の庭」を制作する。「海の庭」は、さまざまな形状の漁網を活用し、教室から見える美しい海や島の景色を借景にした作品。「島の庭」は、今は使われなくなった水瓶や釜などを使用した、かつての伊吹島の生活を想像させる作品。

反響
児童がいなくなった学校で、かつて子供たちが使用していた衣装を再利用し、当時の活気を感じさせるマーチングバンドを再現。まるで幽霊のマーチングバンドが演奏しているかのような空間を生み出す。地元のお年寄りの記憶と減少する若者たちがつながることを目指す。

伊吹の樹
伊吹島には出産前後を女性だけで集団生活し、家事から解放され養生する風習があり、その場所を出部屋(でべや)と呼んでいた。 生命の誕生の場である出部屋の跡地に、作家は生命の樹を植えた。 作品の一部であり、生命力を感じさせてくれる「アロエ」も見栄えがあり、見るたびにその姿を変える。

イリコ庵
「島の小さな集会所」として、島民も利用している東屋。 建築素材には、イリコの加工に使うせいろや島の石垣、瓦、廃木材などを使用している。坂道で疲れた際は、イリコ庵でホッと一息つくのもおすすめ。

最後の避難所
地域は人口流出による後継者不足で、文化や伝統が失われる危機に瀕している。竹と金属でできた神輿のようにも見えるオブジェは、大都市へ移住した新世代の島民に着想を得たもの。竹は団結と協力の精神を反映し、金属は「家」や漁師の道具を象徴する。金属の網は堅固でありながら透けて見え、存在しながらも忘れ去られつつある文化を示唆する。本作は、人口減少と移住による文化の喪失という緊急課題について鑑賞者に考えさせ、地域社会が持つユニークで豊かな伝統を、消え去る前に大切にし継承することの重要性を呼びかけている。